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スノーピーク社 に対して思う疑問

商品開発とか、道具のことは、書くべきでもないし、あまり書くこともない。商品の事は尊敬をしています。


そうではなくて、上場企業としての成長戦略というものに対しての疑問。

財務戦略と事業ポートフォリオの話なので、ややこしいです。


スノーピーク 社は、東証一部上場企業です。

そして、昨今のキャンプブームを受けて、株価が急騰中。特に今年に入ってから。

2019年12月までの決算に対して、2020年12月までの決算での営業利益が倍になったことも反映しているのかと思います。2月前半に発表した数字での純利益が会社予想を上回っていましたからね。あと、同じ時に発表した数字で、2023年で営業利益が倍になるという計画を発表したこともあるでしょう。

ワークマンがアウトドアブームで業績を伸ばしていることからの連想も働いているのでしょう。


ただ、前から思っているのですが、幾らスノーピーク 社の決算説明資料を読んでも、出てくるのは、「スノーピーク 」というブランドをどう育てるか、だけ。


今の時価総額は600億円です。PERで60倍以上、PBRで6倍、PEGレシオでも30倍。

どう見ても割高株です。株価がこの数ヶ月で上がる前の時価総額300−400億円ぐらいでも、数字上は割高でした。

上場企業の取締役会、代表取締役、CFOにとって、株価は「市場が勝手に決めるもの」ではなく、それを能動的に織り込んで動くべきものです。株式市場で人気が出て、株価が上がるならば、それをどう考えるか、という事のメッセージがないといけないです。

今の事業計画(これから3年かけて営業利益が2倍)では、この株価は正当化されません。

そして、同時に600億円というのは、非常に中途半端な時価総額です。グローバルの小型株の機関投資家が、何とか調べてみようかと思う下限の規模です。つまり、まだ小さい。ここから安定して株価が維持・成長していけると思えないと、相手にしてもらえません。国内の個人投資家だけを相手にしている限り、株価の安定はもたらされません。本当の上場企業として土俵に乗れるかどうか、という瀬戸際に辿り着きました(時価総額500億円以下で海外で投資家向け説明会をしても相手にされない、1000億円前後でようやく小型株)。また、この株価評価というものは、普通の上場企業ではなく、目を引く成長をする高成長企業である、という事を証明しなければいけないということでもあります。


また、自己資本比率が60%もあります。高過ぎるでしょう。


結構、これって、???がつく状況です(勿論、今は表面からは見えないだけで、これから何らか実行に移されることがあるのかもしれません)。


疑問に思うことは何か?

1)この株価を正当化するだけの成長戦略はあるのか?

 →売上が増えれば、利益が逓増するという収益構造ではないはず。物作りをしていて、規模は既に効いているのだから、ITのプラットフォーム型と違って利益率がどんどん改善する訳ではない。直近の決算を見ても、売上増に伴って人件費も増えている。

 →市場とともに、自律的に売り上げが成長する、というだけでは、正当化できる株価ではない。市場の成長を上回って、更に売上・利益が成長する経営陣の手腕はどこにあるのか?

2)この経営陣にお金を預けても増やすことが出来ないのではないか?

 →自己資本比率が60%のまま、過去1年間も財務活動によるキャッシュフローはマイナス。つまり、決算説明資料を見ても、融資枠を確保した、と書いてあるだけ。短期借入を長期借入に振り替えることは出来たが、それ以外の成果が見えない。

 →成長している上場企業であるということの財務面での強みを積極的に活かす財務手腕がないのか、あるいは、まとまった資金を投下して事業構築をする手腕がないのか


今から少し前にやった増資が、市場からは評判が悪かったため、また新しい社長になってから時間が経過していないため、消極的なのかなあ?ただ上場してきてからのスノーピーク 社のことを思い出してみると、そうではないんだと思います。


私ならば、何をやるか。骨子は3つです。この3つはセットじゃないといけないです。

1)資金調達を行う

 30億円規模の公募増資(たったの5%)と50億円規模のデッドファイナンス。

 これでやっと自己資本比率50%

 株価が高いということは、デッドファイナンスにとって非常に有利である。

2)キャンプギアのブランドのM&Aを進める

 数年前はキャンプ場のテントは、スノーピーク とコールマン しかなかった。今は色々なテントがある。市場が成熟し始めたということ。

 であれば、国内・あるいは台湾・韓国(スノーピーク が重視している市場)のブランドを買う。そして、ブランドのポートフォリオを持つ。スノーピーク 社の資本力と広告宣伝投下量があれば、単一ブランドを育てるよりも成長ペースが早くなる

3)浮上するようで浮上していないグランピング事業の展開を進める

 コンサルティングで売り上げを立てながら、グランピング施設をフランチャイズで展開する?今の株価を正当化するスピード感で、展開ができるのだろうか?

 自前の施設を作りそこに上記デッドファイナンスを絡めたらいい。


要は、以前の時価総額200−300億円という小さなレベルでは期待もされていないし、出来もしなかった事をやらなければいけないし、やれるということです。

「スノーピーク 」という物・服を売る単一ブランドを育てるだけ、ということを止め、ブランドポートフォリオ・物だけではなくサービスへの事業展開、ということを600億円の時価総額を生かして資金を調達してやろう。


まあ、別に上記の私の書いた2)3)じゃなくてもやれることはあるのかもしれない。ただ、大きくジャンプしないと!


でも、どうなんだろう?

スノーピーク 社を見ていると、「スノーピーク 」という単一ブランドを育てることに拘っていると思える。嗜好品の市場で、単一ブランドには限界があるのに。また資本の力を活用して、ぐんと大きくなる、ということを知らないように見える。スノーピークというブランドを育てるのがダメだ、と言っているのではない。それだけではダメだ、ということを言っています。

また、上場したて、上場してから数年の会社を、焼畑にしようという証券会社に良いようにやられているように見える。


果たして、脱皮できるのだろうか?

まあ、偉そうに書いていますが、ユニコーンである、という事を私も知ってしまったので本当に歯痒くて仕方が無いのです。

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