箱ストーブの歴史

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「箱ストーブ」。。。ご存知の無い方には、なかなか聞きなれない言葉だと思われます。「箱ストーブ」とは、主に登山、キャンプなどで用いられる調理器具のひとつで、燃料としてホワイトガソリン、灯油、アルコールを使用します。鉄やアルミの金属のケースに「組込まれ」、使用の際にケース自体を五徳の一部として機能させるものを指します。ケースを単なる入れ物として使うのではなく、また、液体燃料を気化して燃焼させるといった単純な構造の中で各社趣向を凝らしたデザイン、アイディア、ギミックには大変心惹かれるものがあります。

 

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箱ストーブの歴史~

 

まず、日本では「ストーブ」=「暖をとるもの」を指すのが一般的ですが、欧米では「炎をもちいた調理器具」を指す場合が多く、日本で言うところの「ストーブ」は「ヒーター」という表現を用いられることが多いようです。

現在のアウトドアシーンにおいて炊飯、調理、湯沸かしなどに使われる調理器具は、主に「ガス」を燃料としたものが主流となっていますが、一部、Colemanのツーバーナーを代表とした「液体燃料」を利用する調理器具も根強く使われています。その「液体燃料」を利用した調理器具の始まりは19世紀中ごろまでさかのぼります。

そして19世紀末、スウェーデン1889年Primus(B.A.Hjorth社)により液体燃料ストーブが誕生したといわれています。1899年Optimus社、1882年Max Sievert社が誕生しました。後にMax Sievert社は名器SVEA123を生み出しました。現在でもほぼ形を変えずにSVEA123Rとして販売されています。また、1913年にはRadius社も誕生しており、スウェーデンを代表するストーブメーカーがこの時期までに登場しています。

他国では1918年にオーストリアではMJR社がPhoebusを発売しています。

その他年代を追えるものとしましては、1910年代に独TURM、1930年代には英Monitor社、Hurlock社、米Coleman社が既にストーブを製造しています。

箱ストーブの原点の1台が何であるかは定かではありませんが、個人的には1940年代、第二次世界大戦がひとつの契機となり、運搬の容易さが求められ、箱ストーブの出現が求められたと考えます。

 

 

歴史的名器~Optimus 8シリーズ

箱ストーブの始まりのひとつとして代表的なものはスウェーデンOptimus社のNr.8で、誕生は1940年代後半と言われています。

初期のモデルはアルミケースに組込まれ、ケースの形状が角ばっている以外、ほぼ基本的な構造は半世紀以上のちの最終モデルまで引き継がれており、誕生した時点で非常に完成度が高かったといえます。

1950年にケースの形状が丸みを持ったものに変更されました。いわゆる「8F」というモデルになります。このケースは以後最終モデルまで引き継がれます。この「8F」まではバーナーニップルを掃除するクリーンニードルが内蔵されておらず、プリッカーという器具を使いニップルの清掃を行う必要がありました。

1963年同じスウェーデンのRadius社からRadiusブランドの移譲をうけました。同時にRadius社が特許を持っていたクリーンニードルをバーナー内部に内蔵する技術を得、「8F」のモデルチェンジがおこなわれ「8R」へと進化を遂げました。ビルトインニードルの他にも金属のハンドルをベークライトに変更されています。このモデルの移行期にはケースは「8F」でバーナーが「8R」であったり、クロームメッキタンクの「8R」があったりと中間的な製品が存在し、レアなモデルとして人気があります。

Optimus 8シリーズのクォリティが頂点に達したのがこの頃でしょう。

1966年に同じスウェーデンのPrimusのパラフィンストーブ事業を吸収し、Optimusは拡大路線をとります。同時期に「8R」にも変更が加えられました。ケース天面のエンボスがシンプルになり、ベークライトハンドルが厚みのあるものに変更。111シリーズ等他モデルとのパーツ共有化とコストダウンが目立つ変更となりました。

その後もコストダウンが重ねられ、ケース天面のエンボスロゴの廃止によるデカール化、ベークライトハンドルから工具を兼ねた金属ハンドルへ変更、収納時にバーナーを固定する爪の省略、ケース持ち手グリップの省略。。。

Optimus社の製品はモデル変更時に前後の仕様が混ざった製品が出荷されることが多々見受けられ、切り替わり時期を明確に特定することが困難です。

そして、最終モデルのOptimus 8R Hunterはケースにハンマートーンの厚みのある塗装を採用し、長年のユーザーの要望であった、使用における塗装の剥がれとサビの発生を克服しましたが、1990年代後半に半世紀にわたった8Rの歴史に幕を降ろします。このハンマートーンの8R Hunterも非常に人気の高いモデルです。

今、お手にしているOptimus 8シリーズがどの時期のモデルであったとしても、メンテナンスをきちんとすれば、発売時と遜色のない仕事をこれからもずっとしてくれることでしょう。

 

実用性重視の箱スト~Optimus111シリーズ

 

「歴史的名器~Optimus8シリーズ」はコンパクトで携帯性に優れ、大変素晴らしいストーブなのですが、コンパクトなサイズが故に「長時間の使用」や「大きめの鍋やパン」が苦手なストーブです。そこでひと回り大きな実用性を重視したストーブが1950年初めに前身のOptimus11からモデルチェンジとなり誕生しました。それがOptimus111シリーズです。111シリーズは1990年代まで生産され、現在ではHiker+(Plus)として作られ続けていることからも如何に実用的で優れたストーブかということがおわかり頂けるかと思います。

 

Optimus111シリーズには、使える燃料によって複数のモデルが存在します。

併売されていた時期もありますが、概ね以下の順番で発売されました。

 

111(灯油):ローラーバーナー(ほぼケロシン用バーナー)

111B(ホワイトガソリン) :ローラーバーナー(ガソリン用にバーナー構造が簡素化)

111T(ホワイトガソリン、灯油、アルコール):サイレントバーナー(111バーナーを改良)

111C(ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール) :サイレントバーナー

111Hiker(ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール) :サイレントバーナー

Hiker+(ホワイトガソリン、ガソリン、軽油、灯油、アルコール) :サイレントバーナー

※111C以降はより複雑な「コブラバーナー」に変更となっています。

 

Optimus111シリーズの最大の特徴は、タンクに加圧用ポンプを内蔵している点です。加圧用ポンプがあることによって、複数の燃料の使用が可能となっています。

また、Optimus8シリーズより大型化しているため、大きめの鍋やパンが使用でき、より実用的なモデルとなっています。

入門用としては、比較的安価な111Bから始められるのが良いかと思われます。サイレントバーナーを搭載した111T,111C等は現在でも人気があり高値で取引をされています。

 

Optimus111シリーズは大変実用的なストーブのため、非常に使い込まれた個体が多く存在します。バーナー本体につきましては、きちんとメンテナンスをすることによって本来の性能を取り戻せますが、外側のケースに関しましては「ストーブ各々の個性・歴史」と受け取りましょう。