もう何十年も前に作られた「名作」といって良いカーミットチェア。
そのカーミットチェアに範をとったのがコンダクターズチェアです。
ただ、自分で作っていて深く感じたのが、アメリカと日本の物に対する思想の違いです。
カーミットチェアは、バイクツーリング用に開発をされた椅子です。そして、その開発者のカーミットさんは、もう何十年も前に、その椅子の権利自体を今のカーミットチェアカンパニーに売却をしました。
何か、一つが少し立ち上がれば、投資家に売却をするというのが、そもそもアメリカらしい。
ただ、ここで書きたいのは、そんなことではありません。
一つの道具を、手入れをしながら長く使うか、一定使えればそれでいいと考えるか。
カーミットチェアは、木をポリウレタン塗装で頑丈に包んでいます。非常に丈夫です。擦れても傷が非常につきにくい。湿気にも強い。ただ、質感は損なわれます。
コンダクターズチェアは、無垢の木をワックスで仕上げています。湿気には、カーミットチェアよりも弱いです。ただ、質感は明らかに優れている。実は、この仕上げは、質感を大切にしたいという設計だけではなく、この椅子を大切に、蜜蝋などで手入れをしながら、使ってもらいたい、という思いも込めて選んだものです。
無垢の木は、蜜蝋、クルミオイルなどで、磨いていけば、どんどん輝きが、艶が出てきます。色も育っていきます。愛着も湧いてくるでしょう。ただ、その分、手間がかかります。
その手間を、邪魔だと思うか、自分の椅子になっていくステップだと思ってもらえるか。
コンダクターズチェアは、現行品は以前のステンレスプレートをやめて、真鍮のプレートを使っています。これも実は迷いました。真鍮はかっこいいです。高級感があります。
ただ、ステンレスに比べると、変色します。くすんできてカッコよくなるという見方もありますが、経年変化が起きるのは確かです。それを時々、少し磨いてもらうと、より育っていきます。この手間も、邪魔だと思うか、自分の椅子になっていくステップだと思ってもらえるか。
いかにも、日本っぽい発送の椅子なのかもしれません。
工場で大量生産、というところから遠い作り方をしているコンダクターズチェア。蜜蝋や、真鍮のくすみといった、面倒臭い(でも愛おしい)手間が必要な椅子です。
でも、この椅子を大切に思ってくださる方々が、いらっしゃるだろう、と思って作っています。
ごたくはいいからはやくチェアとテーブルを作って発送してくれ!もう1年以上またされてる!