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なぜ、日本固有のテントの形式が無いのか

色々な文明に、それぞれに適して発達してきたテントがあるという事を見てきました。


そして、中央アジアの遊牧民や北米のインディアン、中東の遊牧民のように「幕」を生活の場として使っていた文化もあります。一方、それ以外の文化では、基本は都市の建築物で暮らすけど、軍隊の遠征時には、「幕」を使うという形でした。ローマや中国、近世の軍隊がそうですね。


だけど、日本には、日本の固有の「天幕」というのがありません。

どうしてなのでしょうか?勿論、日本では「幕」を生活の場として使うという文化がなかったのは、すぐに想像できます。

ただ、日本には、軍隊の遠征が無かったのか?


そんなことはありません。歴史上、何度か軍隊の遠征はありました。

坂ノ上田村麻呂の東北への遠征、源平合戦(平家物語)、南北朝(太平記)、応仁の乱から戦国時代、江戸時代の参勤交代、どれをとっても、文献にあたっても、テントの記述がありません。

唯一あるのは、決戦の時の戦場での陣幕のみ。

寝泊まりする「幕」の記述が全くないのです。絵も残っていません。不思議!


理由は二つあります。

一つ目の理由は、日本は早くから都市化が進んでいた、ということ。

二つ目の理由は、防水素材が無かった、ということ

1:日本は世界でも稀に見る都市群国家

日本では、軍隊はどこに寝てたんでしょうか?

勿論、ムシロ一枚の上で、地面で寝ていたというのもあったのはあったようです。ただ、調べていくと、それよりも圧倒的に多いのが、民家・寺・神社で寝ていた、というパターンです。


なるほど!移動しても、寝る場所に建物があるならば、わざわざ幕を持ち運ぶ必要性は無いですね。

それだけあちこちに家があり(ぽつんとあるだけではダメです。一定規模の軍隊が泊まれるぐらいの数がある)、大きな建物を持った寺・神社がある。


こんな文明、殆ど無いんですよ。文明圏のどこに移動をしても、一定規模の集落、そして寺・神社という大きな公共建築物がある、ということです。


1日の行軍距離20キロとかでしょうか。そうすると、確かに日本だと隣村があって、お寺や神社がありますね。中国や地中海、中東だと、そうはいきません。途中、山の中、高原の上で野営をしないといけないです。

日本は、他の文明との比較では昔から都市化が進んでいた、人口密度が高かった、ということなんでしょう。意外です。都市文明なんです。


2:防水素材が無かった、、、

天幕ですから、雨の時も、それなりに過ごせないといけません。天幕の中にいて、雨がざぁざぁと入ってくるようでは大変です。

ましてや、日本は乾燥をしている中央アジアや中東と比べると、圧倒的に雨がシトシトと降る場所です。

だけど、日本には雨をそれなりに凌げる素材が無かったのです。具体的には、「綿」が無かった。室町時代も中期を過ぎるまでは、素材といえば麻か絹。麻の布は防水性はありません。絹も同じく。そして、天幕に使うには絹は高すぎます。


室町時代を通じて、日本は綿を朝鮮半島から輸入をしていました。はい、貴重品です。一旦、綿の麻や絹に対する優位性が理解をされると、需要はうなぎ登りに増えていきます。価格もどんどん上昇。とうとう、朝鮮では、日本に対する輸出に対して規制がかけられるぐらいになりました。

そして、日本で綿の栽培が定着をして、自給できるようになってきたのは、江戸時代もそれなりになってからです。

もうその頃は、軍隊で遠征をするなんて無いですね。平和な平和な江戸時代ですから。


戦国時代でも、こんな貴重な綿を、一般兵士を含めて天幕に使うなんて、とてもじゃないけど出来ませんでした。



こういった日本の環境を考えると、何故、わざわざキャンプをするのか(だって、そこら中の近い場所に温泉旅館がありますよ、昔の兵隊が寺や神社で寝たのと同じ)、防水性とは、何かを考えないと、テントは作れません。

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